乗り物

海岸線を走る観光列車|リゾートしらかみと日本海の風景|VEH003

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大きく開けた海を背景に、四両の列車が橋を渡っていきます。

足元には家々の屋根と木々が重なり、遠くにはまっすぐな水平線。海沿いの鉄道は、乗り物の姿だけでなく、その土地の暮らしや地形まで一緒に見せてくれます。

「乗り物100選」の第3景は、海岸線を走る観光列車です。

今回のぬりえは、秋田県の五能線、岩館駅とあきた白神駅の間にある第二小入川橋梁を渡る「リゾートしらかみ」の実写写真をもとに制作しました。

写真に写るのは「青池」編成。日本海を背にした実際の配置を手がかりに、海辺を旅する列車の魅力をたどります。

海辺の暮らしをつないできた五能線

五能線は、秋田県の東能代駅と青森県の川部駅を結ぶ鉄道路線です。

一方、「リゾートしらかみ」は五能線だけで運行を完結する列車ではなく、奥羽本線の区間も通って秋田や弘前、青森方面を結びます。

路線の名前と列車の名前を分けて考えると、海沿いの区間が旅のどこに位置するのかを理解しやすくなります。

線路が最初から一本につながっていたわけではありません。秋田県側では1908年に現在の東能代と能代の間が開通し、青森県側では1918年に川部と五所川原の間で私鉄の陸奥鉄道が開業しました。

その後、両側から路線を延ばす工事が進み、1936年7月に全線が開通します。「五能線」という名前には、五所川原線と能代線の頭文字が組み合わされています。

この来歴には、風景を眺めるためだけではない鉄道の役割が表れています。

駅と駅をつなぐ線路は、まず沿線で暮らす人々の移動を支えるものでした。海を望む場所にも住宅や道路があり、そのそばを列車が通ります。今回の写真で橋の下に家々が見えることも、鉄道と集落が同じ土地の中にあることを感じさせます。

やがて、車窓そのものを楽しむ列車が登場します。

1990年には「ノスタルジックビュートレイン」が運転を開始し、1997年には「リゾートしらかみ」が走り始めました。移動の途中に見える景色を、旅の目的として味わう。観光列車は、もともと地域を結んでいた路線に、そうした楽しみ方を加えた存在といえます。

図案の基準にした写真は、2025年8月3日に撮影されたものです。

列車は画面を横切る橋の上にあり、海はその奥へ広がっています。海上を走る橋のようにも見えますが、手前には集落と木々が重なっています。橋、住宅、海の前後関係を確かめると、写真の印象だけでは捉えきれない土地の奥行きがわかります。

列車の屋根や橋の桁は、ほぼ水平に長く続きます。それに対して、木々の輪郭や家の屋根は細かく上下し、遠くの水平線はさらに静かな一本の線として見えます。

同じ横長の景色の中でも、人工物と自然では形のまとまり方が違います。列車の規則的な窓の並びは、複雑な前景の中で乗り物の姿を見つける手がかりになります。

本文に添えたもう一つの沿線写真は、青森県深浦町の行合崎付近で、2020年9月3日に撮影されました。こちらでは岩場と入り江が前景に広がり、列車は海岸の奥を横切っています。

図案と同じ撮影地ではありませんが、五能線が接する海岸の別の表情を見せています。住宅の屋根越しに眺める海と、岩の間から眺める海では、列車を包む風景も変わります。

海岸線は、単純な直線ではありません。岬や入り江、斜面、集落が続き、鉄道の見え方も場所ごとに異なります。

一枚の写真を沿線全体の代表と考えるより、そこで見えているものを丁寧に確かめるほうが、この路線のおもしろさに近づけます。広い海と小さな列車の対比は、その土地の大きさを感じさせる組み合わせでもあります。

景色を楽しむために工夫された列車

「リゾートしらかみ」には、「青池」「橅」「くまげら」という名の編成があります。今回の写真の「青池」は、HB-E300系と呼ばれる車両です。図案では、資料写真に写る四両のまとまりを基準にしています。

観光列車を特徴づけるものの一つが窓です。青森県の公式観光案内でも、「リゾートしらかみ」は床を高めにし、大きな窓から景色を楽しめる列車として紹介されています。外から見ると窓は整った形の繰り返しですが、内側から見れば、一つひとつが移り変わる風景を切り取る額縁になります。

本文の車内写真では、向かい合う座席の間にテーブルがあり、その向こうに大きな窓が見えます。これは2023年4月8日に撮影された「青池」の車内で、窓外に写っているのは海ではなく田園です。

海景色だけでなく、畑や集落も旅の途中に現れることが伝わります。

外観では、屋根の上にも注目です。

今回の列車には、架線から電気を受け取るパンタグラフがありません。HB-E300系は、ディーゼルエンジンによる発電と蓄電池を組み合わせ、モーターで走るハイブリッド式の気動車です。一般的な架線式の電車とは、走るための電気を得る方法が異なります。

鉄道車両を見て、モーターで走るならすべて同じ仕組みだと考えると、こうした違いは見落としやすくなります。

車体の外からわかる窓や扉だけでなく、集電装置の有無も、その列車の特徴の一部です。ぬりえでも、海辺の列車らしい雰囲気を優先して架線を足すのではなく、元の写真にある構造を尊重しています。

観光列車では、目的地に着くまでの時間にも意味があります。青森県の観光案内は、景勝地付近で速度を落として景色を案内することを紹介しています。

また、沿線の文化に触れる催しなども、この列車の楽しみとして案内されています。ただし、実施内容は列車や運転日によって異なります。旅を計画する場合には、最新の公式案内で確認する必要があります。

今回の一景は、列車だけを大きく切り抜いた車両図ではありません。

海、橋、木々、家々まで含めて見ることで、列車がどのような場所を走っているのかが伝わります。車内から海を見る人と、沿線から列車を見る人では、同じ場所でも主役が入れ替わります。

その二つの視点を想像できることが、風景と乗り物を一緒に描く題材の魅力です。

まとめ

海岸線を走る観光列車の姿には、地域をつないできた鉄道の歴史と、移動そのものを楽しむ旅の工夫が重なっています。

第二小入川橋梁を渡る「リゾートしらかみ」は、日本海だけでなく、足元の集落や緑とともに見ることで、いっそう土地とのつながりが感じられます。

四両の車体、窓の並び、橋の構造、遠い水平線。

それぞれの形を実写写真と見比べながら、海辺の暮らしの中を列車が通り過ぎる一場面に目を向けてみてください。

海岸線を走る観光列車|リゾートしらかみ

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